*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- === メールマガジン『語ろうか、手話について』=== No. 59 2001年 9月26日発行 *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 皆さん、こんにちは。 世界が騒然としてくる中、いかがお過ごしでしょうか? 皆さんもニューヨークのテロについては、色々思うところがあると思います が、この事件で私が一番印象に残っているのは、ビルから避難する人が階段を 1列になって整然と避難したって話です。ちょっと前の映画「タイタニック」 では、お金持ちが先に逃げようとするようなシーンが描かれていましたが、い くらか人間は進化したのではないか、と、そう思いました。 さて、相変わらず、本編が進まない状態になっております。申し訳ありませ ん。いつも休刊にするのも心苦しいので、ここは原点に戻り、手話について徒 然なるままに書き連ねていこうと思い立ちました。題して「徒然埋め草」。埋 め草(うめぐさ)とは、雑誌や新聞など、載せる記事がない場合に、適当に間に 合わせで入れる原稿のことです。結果的には、今回の「語ろうか」は埋め草な んですが、心境としては、このようなスタイルが本来の「語ろうか」だと思っ ています。そして、今回のような短いエッセイが読者の方から沢山集まったら それを増刊号として発行したいと考えています。新聞の読者投稿欄みたいなも のですね。ご感想、ご批判、お待ちしております。 ということで、自然言語処理の話は、順延です。意味については2回ぐらい の大作になりそうです。ということで、いましばらくお待ちを。 ---------------------------------------------------------------------- 最近、私は手話と言うよりは、要約筆記に力を入れています。でも、手書き のOHPではなくて、パソコンによるLAN形態の要約筆記です。IPtalkというすご いソフトがあって、8人ぐらいで連携して入力することができるのです。人の 話す早さは1分間に200〜400文字と言われています。入力スピードは速い人で 1分間100字ぐらい。「ちょっと早いね」と言われる私は50〜80字ぐらいですの で、普通に早い人が5人ぐらいいれば、話し言葉を完全に文字として表示でき るわけです。これはすでに要約ではありませんし、話者の言葉がそのまま伝わ るということに加えて、入力者は要約などの思考作業を必要としないという利 点があります。 IPtalkのホームページ http://homepage1.nifty.com/iptalk/ 元々、あの手書きOHP要約筆記のスクリーンに映る手の影を「邪魔だなぁ」 と思っていた私は、このソフトを見た瞬間から、心惹かれるものがあり、この 世界に足を踏み込んでみました。先日、9月22日にある大会ではデビュー戦と して入力者の一翼を担ったのですが、やはりこれはすごいなと実感しました。 手書きOHPが、これに変わっていくのは時間の問題という気がします。 ボトルネック(問題)は、機材の値段が高いことと、制度です。機材としては ノートパソコンを自前で持ってくるのが普通で、私もそうしています。今、だ いぶPCの値段が安くなったとはいえ、ノートパソコンの値段は平均で15万円ぐ らいです。自前で持っている人は、まだ少ないのが現状です。そして、何より も高いのがOHPの代わりとなるプロジェクター。最新のもので、30万円ぐらい まで下がってきていますが、とても個人で買えるような値段ではありません。 そして、パソコン要約筆記は制度化されていないので、現状の持ち出しがやむ なく行われているわけです。これをどうやって解決していくか。かなり大きな 問題です。 ---------------------------------------------------------------------- そんなわけで、最近、私は、中途失聴者や難聴者の話を聞く機会が多くなっ ています。ろう者と違い、ある程度の年齢になってから聞こえなくなる人たち は、手書き以外のコミュニケーション手段を持ちません。これはとても面倒な ことです。対面しても、何か道具がなければ、話もできないのですから。そん な自分の状態を「障害」として、いかに「受容」するかが大きなテーマになり ます。 でも、この「受容」という言葉、とてもひっかかります。いかにも専門用語 的で、そして本人に責任があるような、押しつけがましい感じがするのです。 耳が聞こえないのは仕方ないとしても、その不便さを「受け入れろ」という のは、なんかひっかかりを感じます。何かごまかしがあるような気がするので す。視力が落ちたら、メガネをかけます。そこに「受容」なんて言葉はありま せん。メガネをかけることに「抵抗」することはありますが。でも、今の社会 では、視力の低下は障害ではないのですよね。それは社会が視力低下のコスト を補う土壌があるからです。「障害を受容する」という言葉を生み出している のは、今の社会のあり方なのではないかと思うのです。障害の不便さのコスト を本当に受容すべきは社会の方なんじゃないの? そんなことをPC要約筆記をや りながら考えていたりします。(考えながらやると、入力が遅くなるので、困 るんですけど。) ---------------------------------------------------------------------- 8月の話ですが、聴覚障害者向けのIT講習会の講師をやりました。IT講習会 というのはまったくパソコンを使ったことがないような人、20歳以上の全ての 国民を対象に、地方公共団体が主催して行われているパソコン教室です。費用 は全て国が出すので、全国的に行われているのでご存じの方も多いでしょう。 E-Mailを使う程度までの12時間の講習しかありませんが、それでも受けて損は ないと思います。 費用は国から出ますが、方法は市町村や都道府県にお任せになっています。 モデルケースは提示されているようですが、だいたいは、どこぞのパソコン教 室に依頼することが多いようです。そんなわけで、あまりノウハウのない障害 者向けの講座は実施されることが少ないようですが、私の住んでいる市では、 講習会担当部署と手話通訳者のいる社協がうまくつながりがあったこともあり かなりスムーズに聴覚障害者向けの講座を開くことができました。私も手話で 解説はしますが、あまり手話がうまいわけでもないので、手話通訳者の方々や そして手話サークルの方に補助として協力してもらい、無事に3時間x4回の講 習を終えました。聴言部から15名程度の参加があり、最後にはE-Mailを送りあ えるまでになって、これでIT革命を乗り切ったと思いました。 色々反省すべき点もあります。聴覚障害者だから特別な教授法があるという わけではありませんが、手話の説明と画面を同時には見られないので、そのあ たりのノウハウ不足をサークルの協力者による人海戦術で解決してしまいまし た。そのあたりはなんとかなるように思います。日本聴力障害者コンピュータ 協会の教育部には、そのノウハウを持つ人がいるので、興味がある方は、是 非、そちらにアクセスしてみて下さい。私は... しばらくはのんびり休みたい です。はい。 参考までに日本聴力障害者コンピュータ協会のホームページは次の通りです。 http://www.jbiweb.com/choukon/ ---------------------------------------------------------------------- 夏の間は全国大会などもあるので、しばらくお休みしていた全通研支部の運 営委員会が久しぶりに開かれました。というか、私がサボって委員会に行って いなかっただけなんですけど、すごいびっくりするニュースが待っていまし た。 県で、手話通訳者養成講座が開かれることになっていて、それ自体は、だい ぶ前から聞いていたのですが、昼間の講座だし、私はハナから受けるつもりも なかったので、気にしていませんでした。昼の講座を開くと言うことは、昼に 暇な人をスカウトするという意味もあるし、私も本職はプログラマーで、昼は 働く身です。まぁ、サークルの誰かが受講するだろう程度に思っていました。 県内のサークルも、そんな雰囲気だったようです。 ところが、この講座、申込者に対する事前面接というのがあって、その結果 「全員が講座を受講できる技量にない」ということで、受講者「ゼロ!」とい うことになったそうなんです。これを聞いて、笑いました。力無く、ヘラヘラ と笑うしかなかったです。養成講座って、育てるためにあって、切り捨てるた めにあるわけじゃないと思うのです。何か変だ、と思いつつ、今は再募集状態 らしいです。すでに見込みある人が申し込んだのだから、再募集しても無駄だ とは思うのですが。うちの県の手話通訳者養成はどうなることやら。全通研支 部も報告を受けただけのような感じで、あまり口が出せないようなので、なん とももどかしさだけを感じた話でした。 ---------------------------------------------------------------------- あまり話題に上らなくなった手話検定の話です。 手話検定協会が独自に手話の講師派遣をするとかいう動きもあって、地域に よっては激論になっているところもあるようですが、私の周りではまったく静 かなものです。口に出すことがタブーというわけでもないのですが、今はサー クルのハイキングでどこに行くかの方が問題で、検定の存在はすでに忘れ去ら れた状態です。 とかなんとか言っても、個人的には手話検定協会の掲示板のチェックは欠か さずしていたりします。谷さんや神田先生が、なかなかいいことを書いている んですよね。例えば、谷さんのバッジの話。手話は個人差や地域差があって、 どれを覚えればいいのかをわからない、という初心者の悩みに対して、谷さん は、「山登りをして、頂上の山小屋でバッジを買う。そうやってバッジが集ま るってくると嬉しいですよね。そんな具合に、色々な手話を見て、学んで下さ い」という回答をしていました。「なるほどなぁ、うまいことを言うなぁ」と 思って読みました。 そんなわけで、手話検定協会は、掲示板というものを使って、迅速に色々と 回答をしているのですが、それに対して、全通研や全日ろう連の腰の重いこと 重いこと。日聴紙や支部連絡会などの記録ぐらいでしか意見を伺い知ることが ないのですが、手話通訳者養成研修所や全国統一通訳者試験のことなど、なん か、うやむやにされて、それで終わっちゃっているように感じます。端から見 ていたら、手話検定協会の方がずーーと、しっかりした団体に見えます。特に 私が所属している全通研は、厚生労働省と全日ろう連と共に手話通訳について の制度化を色々考えている団体にも関わらず、法人化に対する考えを2年以上 棚上げ状態です。そんなんで、まともな団体といえるのかなぁ、と思ったりし ています。 手話検定は、通訳者の現場を混乱させるし、えらく簡単そうな試験なので、 あんまり良く思っていない気持ちもあるのですが、でも、見習うべき点は多々 あり、さらに、今後は共同して何かやって行くべき団体としてみなしてもいい のではないかとも個人的に思っています。とにかく、冷静に見る目を持ち続け ていたいものです。全通研よ、しっかりしてくれ。 ---------------------------------------------------------------------- 「アイラブフレンズ」という映画のチケット販売のお知らせがサークルに来 ました。忍足さん主演の映画です。 http://www.neox.to/~kobushi/ILFsub01.html 映画業界の事情はよくわかりませんが、商業的に成功するようになって欲し いです。サークルに協力券を売り歩くのではなく、今全国各地にあるシネコン でほそぼそと上映され続けるような映画になって欲しいなぁ、と思います。 それに映画「どんぐりの家」から始まる一連の聴覚障害者映画も、そろそろ このあたりで打ち止めなんじゃないかという感じがしています。何か路線とし て違うものが欲しいんですよね。手話が絡むと感動の物語にしなければならな いというわけでもないでしょう。忍足さんは以前、コメディに挑戦したい、と 言っていたような気がするので、その方面で期待しております。 ---------------------------------------------------------------------- では、また来週。たぶん、No.60が順調に送れるはずです。 ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して 発行しています。http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000038270) ---------------------------------------------------------------------- ■登録/解除の方法 メールマガジン「語ろうか、手話について」は、以下のURLよりいつでも 登録/解除可能です。 http://www.mag2.com/m/0000038270.htm http://www.rr.iij4u.or.jp/~tokudama/kataro/ ■バックナンバーの参照 http://www.rr.iij4u.or.jp/~tokudama/kataro/ http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000038270 ■掲示板 http://www64.tcup.com/6411/tokudama.html 補助的な情報を掲載しています。編集者への連絡はMailをお使い下さい。 ■苦情、文句、提案、意見など Subjectに[kataro]を入れて、以下のアドレスまでMailをお送り下さい。 個別には返事ができないかもしれませんので、ご了承下さい。 tokudama@rr.iij4u.or.jp ====================================================================== ○メールマガジン「語ろうか、手話について」(週1回以上 発行) 発行: 手話サークル活性化推進対策資料室 編集: 徳田昌晃 協力: 五里、おじゃまる子、くぅ(ヘッダ作成) 発行システム: インターネットの本屋さん『まぐまぐ』http://www.mag2.com/ マガジンID: 0000038270 ■意見、文句、提案、投稿は、居住都道府県名と氏名(匿名可)を添えて tokudama@rr.iij4u.or.jpまで送って下さい。 ■メールマガジン「語ろうか、手話について」は、著作権は徳田昌晃に所属し ますが、基本的には転載・複写自由です。有効にご活用下さい。 ======================================================================