*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- === メールマガジン『語ろうか、手話について』=== No.63 2001年10月31日発行 *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 皆さん、こんにちは。 テキストの話が、あと1回分残っていますが、10月が今日で終わってしまう ので「10月の徒然埋め草」をお送りします。です。全く資料を見ずに書いてい ますから、「あれ?」と思ったら、どうぞご自身で原典に当たることをお勧め します。 ---------------------------------------------------------------------- 先週、地元のサークルの例会に久しぶりに参加しました。最近、仕事が忙し くて行けなかったのですが、その日は鍵当番兼研修当番ということで、午前中 に用事を作って会社を休むことで参加することができました。で、そんなこと はどうでもよくて、その日の例会の内容は、12月のクリスマス会の内容決定で した。私の地域では昼と夜のサークル、そして聴言部合同でクリスマス会が開 催されます。それぞれ、毎年、持ち回りで劇やら何やらをやるのですが、今年 のうちのサークルは、なんでもいいから「楽しめるもの」ということで、私の 発案でクイズということになりました。どんな内容のクイズかは、また別の機 会に紹介します。 さて、本題。その準備の時に、役割分担として、司会者、クイズの解説をす る人、道具を作る人を大まかに決めようとしました。当然、話をする人は手話 が達者である必要があり、私は現在中級に通っている人たちを当てにしていた のです。が、この日、彼女らがあまり手話が上達していないことがわかったの です。最初に手話講習会を受けてから、もう4年ぐらいなのに、NHKの練習テキ ストを表現しながら「やだ〜、まちがえちゃったぁ」なんて恥ずかしがってい るとは。むむむむむ、熱心に講習会に通う彼女らで、このレベルか... こりゃ 司会の手配にも困ったぞ、と。 中級でどんな講習会が行われているのか、彼女らがどれぐらいの出席率なの かまでは知らないのですが、将来の期待の星とされている彼女らの今の技量を 目の当たりにしてしまうと、手話通訳者の育成方法に何か欠陥があるのではな いかと考えてしまいます。手法、回数、時期。色々な要素が絡み合った話です から、バシッと答えは出せませんけど、どうもうまくいっていないのではない か、と思うわけです。うちの地域だけかもしれませんけど。少なくとも、この 問題を解決しないことには、手話通訳者の設置も派遣も絵に描いた餅なわけで すから、かなり気になりました。それとも、本人達の心構えの問題なんでしょ うか。いずれにしても、地元で一人前の手話通訳者が誕生するのは先が長そう です。 ---------------------------------------------------------------------- 前回の「徒然埋め草」でPC要約筆記について書いたところ、掲示板に以下の 投稿がありましたので、ご紹介します。 ----------------------------------------------------------------- 通訳IRC 投稿者:みか 投稿日: 9月26日(水) パソコン要約筆記の話しが出てたので、通訳IRCのことを、ちょっと紹 介。興味があったら、ホームページを覗いてみてください。 http://www.normanet.ne.jp/~tirc/index.html インターネットには、インターネット・リレー・チャット(IRC)といって 同時にインターネットに接続している人同士がリアルタイムでおしゃべ りすることができるサービスがあります。 入力者と呼ばれる人たちは、テレビを見ながらIRCの特定のチャンネ ルにテレビ番組の台詞を手分けして打ち込みます。聴覚障害のため台詞が 聞こえない人たち(鑑賞者)は、テレビを見ながら、インターネットから流 れてくる台詞をパソコン上から読みとります。 そして、みんなで、テレビを楽しんでいます。 ----------------------------------------------------------------- IRCというのは、インターネット上で使われているチャットシステムのこと で、インターネットの黎明期からE-MailやNetNewsと同様に使われていまし た。これが、著作権の関係からドラマの字幕のために使われだしたのが、数年 前からのことだそうです。先日、東京のPC要約筆記講習会でその話を聞いて、 正確な年表まで資料としてもらったのですが、資料の山に埋まって、行方不明 になってしまいました。 もっとも、こんなところで、ぐだぐだ解説するよりは、論より証拠、興味の ある方は是非、上記Webページをご覧下さい。 ---------------------------------------------------------------------- 「君の手がささやいている」というコミックがあります。本編、続編、と続 いて、現在、「最終章」ということで、だいぶ長いこと続いてきましたが、い よいよ最後のようです。お涙ちょうだいのご都合主義な場面もちらほら見受け られるのですが、全体的には、かなり良い出来のマンガです。単行本だけで、 もう30冊近くになりますが、よくまあ、細々とこんなことまで気がついたな ぁ、と感心させられることが多いです。 で、最終章なんですが、なんと子供を中途失聴にする展開となって、人工内 耳の話になってきました。こうなるとは、まったく予想していなかったので、 とても驚きました。ERとは違って、こちらは人工内耳を受ける方を選択したの で、なかなかこちらも興味深い物があります。人工内耳の欠点と長所を丁寧に 描いていく軽部潤子さんの力量に、これからも期待しています。 ところで、ドラマといえば、だいぶ前に終わった「新・星の金貨」ですが、 あるテレビ雑誌を見ていたら、最後は主人公の男の子の耳が聞こえなくなって ハッピーエンドだったそうで。なんじゃそりゃ? と思うのですが、詳細は全然 わからず、でも、視聴率がだいぶ悪かったようでどこも取り上げておらず情報 もなく、といって、別に知りたくも無し、という感じです。が、もし、ご存じ の方がいたら、何がハッピーエンドだったのか、教えて下さい。 ---------------------------------------------------------------------- TAOという研究機関があります。正式名称を通信放送機構といい、NHKと一緒 に色々な放送技術の研究をしています。行政改革のあおりを受けてなくなる予 定になっているそうです。我々にとっては、NHKニュースの字幕に関係してい るので、注目すべき研究機関ではあります。 http://www.shiba.tao.go.jp/ 音声認識技術により、スタジオでのアナウンサーの発話は全て自動的に字幕 になるようになった成果は、とても素晴らしいものがあるのですが、現在の TAOは要約技術を研究しています。つまり、全ての字幕を出すと読むのが大変 とか、画面が字でいっぱいになってしまうので、要約することでなんとかしよ うというわけです。 ですが、この研究がとてもしょぼい。今年の3月に言語処理学会で福島先生 と江原先生が「リアルタイム要約としての要約筆記のにおける要約の手法」と いうテーマで発表をしています。手書きの要約筆記から要約の自動化手法を発 見しようというものですが、結局、余分な部分を省略するぐらいしか発見でき ていません。例えば「いかにして->いかに」とか「ご参加いただきましてあり がとうございます->ご参加ありがとうございます」とか。日本語を読み書きで きる我々としては、そんなの当たり前じゃん、という感じです。これを計算機 でやるのが大変なんだ、という反論もあるかもしれません。というより、私自 身が自然言語処理研究に従事していましたから、そう反論したい気持ちがあり ます。 ですが、ある本を見て、素人さんに降参状態になりました。その本とは「話 しことばの要約」というもので、著者は杉並区要約筆記者、三宅初穂という人 です。私は会ったことがありませんが、後書きから推測すると、杉並で精力的 に活動されている方のようです。 この本の中に「体言止め、助詞止めの効果」という節があります。「不信任 案が否決」されるという文が、わずかな助詞の追加や体言止めによって次のよ うな効果を生み出すことを例示しています。 要約文 -> 意味するところ 1. 不信任案は否決 -> 否決された。 2. 不信任案は否決の方向 -> 否決される見通し。 3. 不信任案は否決の方向に -> ほぼ否決されるだろう。 4. 不信任案は否決の方向へ -> 大勢は否決に傾いている。 5. 不信任案は否決の方向か -> 否決が優勢になりつつある。 参りました。ここまで綺麗に、明確に整理された研究成果は自然言語処理で は、まだありません。三宅さんは長年の経験から編み出されたのでしょうけど この知見は専門家をはるかに越えています。これを計算機で実装したら、それ で修士論文、うまくすれば博士論文にはなりますね。 この本は、とても薄いのですが、他にもいくつかの要約手法が疲労されてお り、「これを計算機で実装するだけで何人かの博士号が誕生しそうだなぁ」と 私は思いました。この本、口コミで売られるだけらしいのですが、要チェック です。 ---------------------------------------------------------------------- 先々週の話ですが、情報処理技術者試験というものを受けに東京は市ヶ谷ま で行ってきました。結果は散々でしたが、面白い物を見てきました。こういう 試験は、大学が会場になっていることが多いのですが、今回は上智大学。初め て行ったのですが、こぢんまりした校舎の中に教会がある小ぎれいな大学でし た。試験監督のアルバイトが女子学生ばかりだったので、きっと平日はキャピ キャピした雰囲気の大学なんだろうなぁ、と思った次第です。 さて、面白い物というのは、昼休みにフラフラしていて、大学近くの喫茶店 の前で見つけました。「手話を教えます」という張り紙です。初心者向けは4 回で6000円。中級者向けはもうちょっと回数が多くて(よく覚えていないけど) 12000円(?)、という具合でした。どうやら、喫茶店の人が主催らしくて、毎土 曜日にお茶会を兼ねて開かれているようです。 「ふーん、都会にはこんなものがあるのか」と思うと同時に、上智大学が通 訳者養成学校であることも思い出しました。上智といっても色々な学部があり ますけど、市ヶ谷校舎は比較文化学部とかいうのがあるそうで、学内の掲示板 も英語が多かったし、学生向けの掲示板にはワールドゲームズのボランティア 通訳者募集とかがあって、どうやら卒業生のかなりの部分が通訳で活躍するよ うです。 今は国立リハビリテーションセンターや世田谷の福祉系の専門学校など福祉 系の学校でのみ手話通訳者の養成が行われていますが、もしかしたら、ここで すでに広く実践し、歴史も長い英語などの外国語の通訳技術と手話の通訳技術 が融合する場になるのではないかと思ったのです。別に福祉系の大学で手話を 教えるのがまずいとは思いませんけど、会議通訳や法廷通訳を担うような人材 を育成するには、端から見ていて、いまいち技術的、実践的な経験の厚みが足 りないと思います。上智大学のような場で、実践的なものを身につけ、それを 手話通訳にも適用する動きができたら面白いだろうなぁ、と思いました。 ---------------------------------------------------------------------- 今回の徒然埋め草はここまでです。たぶん、次回のNo.64はテキストの最後 の回が順調に送れるはずです。その後は未定ですが、11月10〜11日に関東地区 の全通研集会があるので、その報告ができればいいなぁ、と思っています。 では、また来週。 ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して 発行しています。http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000038270) ---------------------------------------------------------------------- ■登録/解除の方法 メールマガジン「語ろうか、手話について」は、以下のURLよりいつでも 登録/解除可能です。 http://www.mag2.com/m/0000038270.htm http://www.rr.iij4u.or.jp/~tokudama/kataro/ ■バックナンバーの参照 http://www.rr.iij4u.or.jp/~tokudama/kataro/ http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000038270 ■掲示板 http://www64.tcup.com/6411/tokudama.html 補助的な情報を掲載しています。編集者への連絡はMailをお使い下さい。 ■苦情、文句、提案、意見など Subjectに[kataro]を入れて、以下のアドレスまでMailをお送り下さい。 個別には返事ができないかもしれませんので、ご了承下さい。 tokudama@rr.iij4u.or.jp ====================================================================== ○メールマガジン「語ろうか、手話について」(週1回以上 発行) 発行: 手話サークル活性化推進対策資料室 編集: 徳田昌晃 協力: 五里、おじゃまる子、くぅ(ヘッダ作成) 発行システム: インターネットの本屋さん『まぐまぐ』http://www.mag2.com/ マガジンID: 0000038270 ■意見、文句、提案、投稿は、居住都道府県名と氏名(匿名可)を添えて tokudama@rr.iij4u.or.jpまで送って下さい。 ■メールマガジン「語ろうか、手話について」は、著作権は徳田昌晃に所属し ますが、基本的には転載・複写自由です。有効にご活用下さい。 ======================================================================