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             _/_/ メールマガジン 『語ろうか、手話について』   _/_/
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No. 77                                              2002年 4月24日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。色々な定期総会もそろそろ終わる今日この頃、いかが
お過ごしでしょうか。

  今回は全通研の話をします。と思って、全通研の機関誌を読んでいたら、今
支援費制度という、えらい話が持ち上がっているんですね。ちょっとボー、と
しすぎたと思いました。そのうち解説しますけど、これはえらい話ですわ。今
年中に勉強しないと、いかんですよ、これは。

  最初から話がそれましたけど、「語ろうか」では、No.42で全通研の紹介を
しています。今回の原稿は、それを元にしています。でも、かなり書き直した
ので、ナンバリングは新しくしています。

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  さて、4月は私にとって、とても憂鬱です。というのは年会費の季節だから
です。手話関係だと、地元のサークルに会社のサークル、そして全通研に手話
学会、聴コン会。趣味の方でも、情報処理学会に言語処理学会に福祉情報工学
会。そうそうJAFなんてのもありました。これらの年会費の請求書が一気に来
るのですから、憂鬱にもなるというものです。日聴紙などの新聞の請求費が春
でないのが救いです。

  この年会費の中でも、全通研は1万円とかなり高額です。金額だけなら情報
処理学会とかのほうがもっとたかいのですけど、送られてくる機関誌なんかを
比較すると、どうも割高感があります。年4回+αの雑誌で1万円は、皆さんも
結構つらいんじゃないでしょうか。
  とかなんとかいいつつ、結局、全通研を辞めないのは、機関誌以外の部分に
意義を感じているからです。そのことを全通研の歴史を振り返りつつ、眺めて
みることにしましょう。

  今回の参考文献は、次の1冊です。
  1) 全通研20周年記念誌「翔びたて全通研」
      全国手話通訳問題研究会, 1994年8月26日発行

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  手話に関係する団体は、今でこそ色々ありますが、全国組織で、いくらかの
歴史を持ち、現在でも精力的に活動しているのは、全日ろう連(全日本ろうあ
連盟)と全通研と全難聴と私は見ています。手話サークルは全国的な組織があ
りませんし、全要研(全国要約筆記問題研究会)は、まだ始まったばかりな感じ
ですし、聴コン会(聴覚障害者コンピュータ協会)は分野が専門的すぎるなどな
どの理由で絞っていくと、一般の人が関与できるのは、先の3つの団体になる
と思うわけです。で、この中で全日ろう連と全難聴は聴覚障害者のみが会員と
なっているので、健聴者である私が会員になれるのは、全通研だけです。

  全通研、正式名称を「全国手話通訳問題研究会」と言います。

  全通研は今年設立27年目です。全通研の前身は1968(昭和43)年に行われた「
全国通訳者会議」だそうで、これは全国ろうあ者大会に併設して行われたもの
です。この頃は京都で「みみずく」という手話サークルが設立された時期で、
朝日新聞から賞をもらった伊東雋祐先生の自宅が事務局だったりと、全ての活
動が個人の力に依存していました。

  全通研を語るのに、伊東雋祐先生という超有名人を抜きには語れないので、
ここで簡単に先生について説明します。
  伊東先生は、1949年(昭和24年)に京都府立聾学校の教師となり、それが縁で
手話の世界に入ったそうです。当時は、まだ手話ができる人が少なく、手話通
訳が必要な時、それはだいたいトラブルの場面で、警察署とか裁判所などです
が、そういう所には、ろう学校の先生が呼ばれることが多かったそうです。た
だ、今も昔も同じですが、先生には転勤がありますから、ろう学校の先生も、
ずっとろう学校にあるわけではないので、手話を使える先生は数が少なかった
ようです。そんな状況ですから、熱心に手話を学び、使っていた伊東先生は、
自然とろう者との関わりが深くなってゆき、手話通訳という立場で大きな役割
を担うようになっていったのも必然であったと思われます。参考文献の34ペー
ジには、全通研の初期の事務所として伊東先生のお宅の写真が載っています。
すごく歴史を感じます。

  1969年に始まった手話通訳者会議も7回を重ね、1974年の青森大会で発展的
に全通研の設立となります。参考文献によれば、1980年に機関誌の発行を運営
委員会から切り離し、1984年には運営委員の下に企画調査部、組織部、事務局
編集局があるという組織らしい体制が確立します。図で書くと次のようになり
ます。

                          総会
                           |
      監査委員会 ----------+----------- 支部代表者会議
                           |
                      運営委員会
                           |
                           +------ 本部事務所
                           |
      +-------------+------+-+--------+
      |             |        |        |
  企画調査部     組織部   事務局    編集局

  だいぶ組織らしくなってきましたね。この後の変化は、結構早くて、1986年
に四役会議、常任委員会が設置。「あり検」ができたのが1987年。運営委員会
の下に各局が位置づけられて、見た目にすっきりした体制が確立したのが1992
年となっています。20周年記念誌が発行された頃から現在までの変化はわから
ないのですが、来年の代議員会議の資料による組織体制(案)は、以下のように
なっています。

                            代議員会
                               |
                               +---支部長会議--支部代表者会議
                               |
                           運営委員会--四役会議--常任委員会
                               |
           事務所--事務局------+
                               |
   +-----------------+---------+-------------+---------+
   |                 |         |             |         |
  研究出版部        財政部    健康対策部    組織部    研究支部
   |                           |                       |
   +- あり方検討委員会         +- 健康対策委員会       +- 編集部

  かなり大規模組織になってますね。2002年には会員が1万人を超え、実質的
にも日本最大の手話関係団体となっています。

  それで、これは本部の組織ですが、全通研は各都道府県に支部があり、通常
の活動は支部活動が中心です。

  私の所属する千葉の場合、運営委員長、副委員長、事務局長の3名を中心に
事務局があり、さらに専門班と地域班が組織されています。

運営委員長、副委員長、事務局長
  +-- 企画・研究部、事業部、組織部、機関誌部、健康対策部
  |
  +-- 専門班
  |     +-- 医療班、労働班、通訳班、保育班、福祉対策班
  |
  +-- 地域班
        +-- 船橋班、八街班、八千代班、習志野班、松戸班、鎌ヶ谷班、
            市原班、千葉班  印西班、東金班、山武班、海匝地域班、
            銚子班、君津班

  この構成は各都道府県で、かなり異なっていて、東北のある県支部では、「
崖っぷち班」とか、かなり面白い名前が付いていると聞いたことがあります。

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  このような本部と都道府県支部の二重構造がありまして、会員は支部会員で
あると同時に、全国の大会にも参加するわけです。そのあたり、情報流通が個
人に依存している面がありますが、熱心に活動する人には、結構動きやすい面
もあるかと思います。逆に外から見るとわかりにくいですよね。

  こんどは、本部からの全体的な活動内容を見ていきます。

  全通研とは何をしている団体か? 事業報告を読んでみると、全国的な活動と
しては、研究、組織拡大、機関誌発行、事業活動に分類できるようです。順番
に見ていきましょう。

1. 研究活動

  - 支部・ブロックの学習研究活動
    全通研は都道府県ごとの支部から構成されています。これは前述したとお
    りです。

  - 全国手話通訳問題研究会集会と全国手話通訳問題研究討論集会
    全通研の全国大会は年に2回開かれます。「夏の集会」、「冬の集会」と
    呼んでいます。夏の集会は8月に行われています。今年は滋賀県だそうで
    す。内容は講演会や講座、そして観光が中心で、どちらかというと座学や
    遊びの要素が強いです。
    冬の討論集会は、10個を越える分科会で構成され、2日間テーマに沿った
    討論が行われます。こちらは夏の集会と違って、遊びの要素は全然なし。
    分科会によってかなり特徴があり、議論の応酬となるところもあれば、ひ
    たすらレポート発表会が続くところもあるようです。私は「サークル」の
    分科会に出ていますが、愚痴の吐き出しどころという気はしています。た
    だ、その中にも貴重な情報が混じっているので、とても面白いです。
    全国大会は参加者の情報交換という面もあり、知り合いが増えてくるとど
    んどん楽しくなります。元気だった、生きてた? なんて挨拶があちこちで
    聞かれ、相変わらずエネルギッシュな人達を見ていると、こちらも元気が
    出てきます。全通研に入って、一番楽しいイベントが、この2つの全国大
    会です。

  - 全通研学校
    これは数年前から始まった講義形式のイベントで手話や福祉に関する講座
    が2日間集中で開催されます。夏に東と西で各1回ずつ開催されます。今年
    は東京と福岡で開かれるそうです。

  - 手話通訳健康問題対策委員会
    私はあまり関わりがないのでよくわからないのですが、通訳問題研究会で
    すから、当然、健康問題も研究しています。手話通訳者の職業病として頸
    肩腕(けいけんわん)障害というものが知られており、その防止や一般的な
    労働災害について、全国調査を行っています。

  - 手話通訳活動あり方検討委員会
    通称「あり検」と呼ばれていて、様々な活動をしています。上記の大会に
    運営や介護保険の調査などを行っています。ただ、実態は私にもよくわか
    りませんが、何か資料を読んでいると「あり検」が作っていたりして、そ
    の活動の幅の広さや力のすごさを感じます。

2. 組織拡大活動

  これは全通研に限った話ではありませんが、とにかく会員の拡大を目指して
います。ここ数年、1万人を目標にして、なんとか昨年達成しました。でも、全
国組織としては、まだまだ小さいですね。

3. 機関誌活動

  全通研の会報誌である「手話通訳問題研究」は、かなり真面目に行政関係の
取材が得意な雑誌です。年4回発行されています。少し前の話を出すのは酷か
もしれませんが、1回発刊できなかったことがあったんですよね。しかも、不
定期だったし。今はかなり改善されてきており、全通研も一人前の団体として
動いているな、と思います。
  あと様々な本を発行しています。主に手話通訳活動に関する書籍ですが、市
販のありがちな手話本とは一線を画す内容は、やはり全通研しか発行できない
ものがあります。

4. 事業活動

  他の部分と重なりますが、書籍販売やビデオ製作、販売をしています。

5. 共同事業

  全通研単独での活動というのは、どちらかというと珍しくて(全通研学校ぐ
らいかな。)ほとんどは全日本ろうあ連盟や手話通訳士協会との共同事業が多
いです。今年の事業報告を見ていると、年2回ですが、全国要約筆記問題研究
会との定期協議もしているようです。

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  以上、全国的な活動を見てきましたが、全通研というと、先ほど述べたよう
に普通の人は支部活動を指します。全通研は1993年に佐賀支部をもって、全国
47都道府県全てに支部ができました。基本的に全通研は支部ごとの活動が主体
です。私は石川県と千葉県しか詳しくは知らないのですが、2つを比較しただ
けでも、えらい違いがあります。全通研といっても、活動内容は様々。サーク
ルの延長のような単なる勉強会しかやっていない支部もあれば、手話通訳派遣
事業をガンガン進めているような支部もあります。

  私は、全通研は手話通訳に積極的に関わる人が所属するような団体、と思っ
ていたのですが、中にはサークルがない地域でろう協の活動を補完するような
団体、とか、ろう協に対する健聴者団体、など全通研に対する思いは人により
様々です。これは地域での活動の違いにもよるようです。

  そんなわけで、皆さんが全通研に入ると、こういう活動が待っている、と明
確に言うことはできないのですが、少なくとも、地域での活動が基盤となって
全国的な活動につながっていくことは忘れないでください。全通研学校や討論
集会のような高いレベルの大会が開催できるためには、地域の活動の積み重ね
があり、会員の会費による財政の裏付けがあり、会員の知識の集積によって成
り立っているわけです。ということで、是非、皆さんにも全通研に入ってもら
い、共に全通研の活動を盛り上げていって欲しいと思います。

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  会費が高いとぼやいていますが、それ以外に全通研になるための会員資格は
特にないんです。手話通訳でなくてもいい。最低限、会費さえ払えば会員で
す。全国大会に行ってみると、参加者の半分が通訳者、残りの半分は手話がそ
れほどできるわけではないように思います。全国大会での見た目がそれですか
ら、実際の支部の状態をあわせて考えれば、全通研は通訳者団体というより、
通訳に感心のある人の団体と言えるでしょう。実際、全通研もそう言う方向を
目指しています。手話通訳者だけが集まるなら、今は日本手話通訳士協会があ
るわけで、全通研としては、広くたくさんの人を巻き込んだ活動が必要である
と考えているわけで、昨年の会員1万人達成運動は、その象徴でした。全通研
というと、名前の堅苦しさから腰が引けてしまう人がいますけど、あまり気に
せず、情報取得の手段として活用していけばいいのではないかと思います。

  これから全通研はNPO法人の獲得という自身の重要な課題を抱えながら、手
話通訳者の認定、要請、設置、派遣の充実という目標に向かって、ろうあ者と
共にさらに活動の幅を広げ、量も増えていきます。全通研は、手話通訳者だけ
ではなく、手話通訳に感心のある人でも参加できます。むしろ、後者の人達の
力が必要です。「語ろうか」の読者の皆さんも全通研の仲間として活躍される
ことを期待しています。

  最後に、会費の話をしておきましょう。全通研の会費は、だいたい今は年間
1万円が相場のようです。これは支部ごとに多少異なります。活動の状況によ
り、なんとかやっていけると思えば8000円ぐらいの地域もありますし、活動を
充実させるためにはということで12000円の地域もあるそうです。決算報告を
読むと、だいたい交通費や人件費が大部分を占めています。活動するというこ
とはお金がかかるということをご理解下さい。
  全通研は基本的に自分の住所のある都道府県支部に入会することになってい
ます。具体的な年会費は皆さんが加入する支部に聞いてみてください。

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  ところで、今年の全通研学校は、東京が言語学、九州が福祉施策だそうで
す。言語学の内容は、昨年の大阪とほとんど同じそうなので、ちょっと迷って
おります。同じものを2回聞くのもねぇ.. ただ、その事前学習に役立つように
いよいよ、自然言語処理学からの手話の連載を7月までに再開、終了したい
と思います。乞うご期待。
  それから、今年の夏の集会は滋賀県、冬の討論集会は神奈川は横浜です。

  最後に全通研のURLをご紹介しておきます。
  http://www.zentsuken.net/

  では、また水曜日に会いましょう。
  そして全通研学校や夏や冬の集会でも会いましょう!

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