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No. 103                                             2005年 1月26日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さんこんにちは。行事連チャン月間である2月を前に、最後の休日はいか
にすごすべきか計画中の徳田です。とか何とか言っても、討論集会とか、チャ
リティーコンサート手伝いとか、好きでやっていることですから、辛いという
わけでもないんですけどね。

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  前回の続きで、三位一体改革について、時間の流れに沿って見ていきます。

  前回の話でまず思い出して欲しいのは、地方六団体が出した「廃止して欲し
い国庫補助金リスト」です。再掲しますが、資料は以下のURLを参照してくだ
さい。

  国庫補助負担金等に関する改革案
    http://www.nga.gr.jp/chijikai_link/2004_8_x04.pdf

これの意味するところは「リストにある国庫補助金は廃止して、その分、自由
に使えるお金でください。」というものです。これらはわざわざ国がやるよう
なことではないよと。地方には地方の事情があり、地方の方がわかっているこ
とがあるんだから、地方に任せてもらえれば、無駄も減り、効率的にお金が有
効に使えるよ、と地方六団体は主張しています。

  これが俗に言う「一般財源化」です。

  これは別の面から見れば、地方が自由に事業を作ったり、廃止したりできる
ことを意味しているわけで、今までやってきた事業がなくなるかもしれないし
別の新規事業ができるかもしれないということです。

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  さて、この中で手話通訳制度がどのように流れてきたかと言いますと、国に
よるメニュー事業だったわけです。つまり、国庫支出金でした。地方はこれを
廃止してくれと言っています。確かに、国庫出金の廃止は、事業の廃止へ直接
は結びつきません。地方の裁量でやりますよ、ということですから。

  でも、もし、手話通訳事業を無駄と思っている地方があったとしたら。無駄
とまで言わないけど、もっとスリムにできると考えていたとしたら、今までの
手話通訳制度は維持できなくなります。

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  この時点で、当初の思惑通りに行っていないところが2つありました。一つ
は厚生労働省。もう一つは全日ろう連や全通研などの聴覚障害関係団体です。

  厚生労働省の思惑違いとは何か?
  それは制度の拡充がなし崩し的に無しになってしまうことです。手話通訳制
度に限って言えば、メニュー事業やモデル事業と言った小手先の方法ではなく
もっと法律的な裏付けを持つ制度として確立したい、というのが厚労省の思惑
だったと思います。
  それが地方からは「そんなのこっちでやるから、お金だけちょうだい」と言
われてしまったわけです。今までの経過、それに地方の実情を見ていると、お
金だけ渡したら、手話通訳制度をやるわけがありません。だって、倒産しそう
な市町村が多いわけですよ。お金だけ渡したら、絶対他のことに使うのは自然
の成り行きじゃないですか。

  次に聴覚障害者関係団体の思惑違いとは何か?
  それは一般財源化です。そして、実は一般財源化は回避できたのではないか
という思いです。
  というのも、もし、支援費との統合を進めていれば、今回の地方六団体の案
では、介護保険同様に一般財源化の対象外になるかもしれなかったわけです。
  それが、手話通訳の無料化にこだわったあまりに、密接に関係している地方
からはじゃけにされ、一般財源化によって、地方、つまり都道府県、市町村に
対する個別交渉が必要になってしまい、全体として必要となる労力が激増して
しまいました。そして後にハッキリしてきますが、結局は有料化への流れは食
い止められなくなってしまいました。

    *  *  *

  そんな思惑違いを抱えた者同士(だと思う)の両者は相談することになりまし
た。その様子は昨年の関東討論集会で、全通研本部運営委員より報告がありま
した。相談は何回かあったようですが、私が出席していたわけではないですし
後になると無意味になった話もあるので、以下、私の想像を元に書きます。

  まず、一般財源化について、厚労省に聞いたところ、厚労省としては何らか
の補助金での手話通訳制度の維持は検討しているとの返事があったそうです。
でも、地方六団体にあそこまで言われては、今までの制度は使えないし、どん
な制度になるかは、まだ未定との返事だったそうです。

  それと同時に手話通訳制度を、制度としてしっかり確立するための手段を講
じる、との話があったそうです。それが、グランドデザインとして後々出てく
ることになります。

  そして、一部有料化、つまり応益負担制度は、時代の流れであり、導入は必
然であると言われたそうです。

  全日ろう連や全通研としては無料化にこだわったので「補助金の様なものが
出た場合に、市町村が自ら有料になった一部を負担して、利用者には実質、無
料という制度にしてもいいのか?」と聞いたそうです。厚労省の回答は「いい
ですけど」というものだったそうです。「けど」付きの回答です。
  行政交渉に詳しい人の意見では、この「けど」は、そういうことをしたら、
補助金は出さないかもよ、という脅しなんだそうです。理屈としては「市町村
で負担できるぐらいなら、全部負担しなさいよ、余裕あるんだから」というこ
となんだそうです。
  でも、国の意向返しであることは、誰が見ても明らかなんですが、そこは昔
からそういうもんなんだそうです。三位一体改革は、そういう点では必要です
ね。

  さて、厚労省と全日ろう連・全通研は、当面やるべきことを見いだします。
それは、全日ろう連と全通研が、地方に対して、手話通訳制度の維持の要望書
を提出することです。これが、緊急の呼びかけとなって、ろう協や全通研支部
があわただしく、都道府県や市町村に文書を出したり、今後の動向を聞いたり
する活動となりました。

  その結果はどうだったかというと、地方からの回答は「まだ、何も決まって
ないから、何とも言えませんねぇ」というところがほぼ全部と聞いています。
廃止すると明言したところは、私は聞いていません。そもそも、手話通訳制度
がないところがほとんどなのです。そんなところに、「通訳制度の維持を」な
んて言っても、「え? 今までも無かったじゃん」となってしまいますし。
  ということで、廃止と言うところはありませんでしたし、どこも今まで通り
やるつもり、という回答だったようです。でも、とにかく変化激しい改革の行
方、「つもり」としかいいようがなく、もしかしたらダメになるかも、という
雰囲気はどこも同じだったようです。

  この運動、果たして効果があったのでしょうか。まだ評価は早いかもしれま
せんが、私はなんか付け焼き刃のような印象がありますし、厚労省に踊らされ
たという感じもします。
  確かに地方に実情を訴える点では、やっただけ印象が強まったとは思いま
す。が、本当に必要なのは、それこそ地方六団体が言うように、地方の実情に
あった制度の確立です。最初の受講者は多いのに、途中でどんどん辞めていく
ような奉仕員養成講座をのんべんだらりと毎年開くのは確かに無駄です。き
ちっと養成して、数が揃ったら維持することに力を入れるというようなメリハ
リのある運用は、地域に密着して小回りのきく地方だからこそできるはずで
す。
  我々としては、そういう活動ができる案を提案し、行政を支えていく活動こ
そが必要でしょう。単純に今までの制度を残してくれー、なんてすがるのでは
なく。

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  さて、いよいよ今のところの最終ラウンドです。厚労省からグランドデザイ
ンが出てきました。

  理想に燃える厚労省は、手話だけでなく、広く福祉一般を見直し、福祉制度
を徹底的に変えてしまうグランドデザインという方針を発表します。これを元
に関係各所、団体等と調整し、落としどころが決まったところで、法律改正と
いう大技を繰り出す予定です。

  大変革にもかかわらず、この案が通りそうな雰囲気である理由は次の点が上
げられます。(弱弱)

  ○ 国がやるから。
  ○ 大義名分は正しいと誰もが思う内容だから。

  あと、先ほど「踊らされた」と書きましたが、それは、厚労省がグランドデ
ザインを通すために、上からと下からの圧力で、うまく六団体を封じ込めて
いっているように感じるからです。上からと言うのは、厚労省が出すはずの法
律の力。下からと言うのは我々の出した要望書です。

  もっとも、健康保険や義務教育といった大きな問題の前には、グランドデザ
インなんて六団体にしてみれば、さほど気にかけるような事柄ではないと言う
こともあるのかもしれません。

  さて、そうとなれば、あとは細かいことが問題になるわけです。

  手話通訳制度に触れている箇所はすごく少ないのですが、
    ○通訳制度を実施するのは市町村。
    ○通訳者を養成するのは都道府県。
    ○通訳を利用する時は、応益負担になるだろう。
ということぐらいが書いてあります。あとは読み込んでいくほどに、関係があ
ると思うとありそうだし、無いと言われれば無さそうだしという感じで、福
祉を専門に勉強したこともなく、行政に詳しくない私には、なんとも判断つ
きません。(弱弱)

  さて、グランドデザインに関する関連法規改正ですが、私が見ているグラン
ドデザイン資料によると、次期通常国会に提出するそうです。次期...って、
先週から始まっているじゃないですか!

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  手話通訳は聴覚障害者の基本的人権に関わることで、基本的人権は憲法でも
保障されていること、と私は考えていたのですが、いつの間にか、福祉は人権
ではなく契約という制度に置き換わってしまったようです。
  いつの間にかというと語弊がありますが、確かに介護保険は契約制度で導入
され、支援費制度もそれに準じたものですから、その時点で気がつくべきだっ
たのかもしれませんが、そのときは単に方法として、措置が契約に置き換わっ
たぐらいにしか認識していませんでした。

  どうにも納得しがたい気持ちが私にはありますが、私の気持ちがどうであろ
うと、日本での福祉の世界がそのように流れていってしまっていることは事実
で、この流れを食い止めたり、変えたりするのはとても困難です。

  それよりも、果たして今のままの手話通訳制度を維持してくれとお願いする
ことがいいことなのか、という疑問が私には浮かぶようになってきました。
  今の通訳制度ってそんなにいいものでしょうか? 同じ手話通訳なのに、ハ
ローワークと市役所の福祉課では制度が違うなんて変じゃないですか? 設置と
派遣なんて区別があるのは変じゃないですか?
  厚労省の打ち出していくやり方に反発する人もいますが、私はグランドデザ
インを作った厚労省の気持ちはなんかすごくよくわかります。むしろ、そのよ
うな方針さえ打ち出せず、従来の方式のみに固執している全通研の方がなんだ
かなぁ、と思います。ダメだと思うなら代案を出すぐらいの気概が必要だと思
います。

  せっかく地方分権と言われているのですから、我々だって、もっと制度の変
革を担うような突っ込んだ活動をして、よりより手話通訳制度を目指してもい
いんじゃないかと思います。

  一介のヒラ会社員コンピュータエンジニアでもこれぐらい考えられるんです
から、福祉に関わっている人、行政の担当者、政治家や大学の先生や研究者は
もっと頑張ってよ。フレーフレー。

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  来来週末(2月12日)は読者の会です。全国討論集会の後の交流会にあわせて
19:00ぐらいから東京の代々木周辺で開催します。交流会は、適当に居酒屋な
どに集まってワイワイやるだけですから、全通研の会員でなくてもOKです。
参加したい方はメールをtokudama@rr.iij4u.or.jpに送るか、掲示板まで連
絡ください。集合方法を個別にお知らせします。
  せっかく全国から人が集まるのですから、色々な人から意見をもらいたいと
思います。途中とか、ちょっとだけ参加してみるのもアリです。メールではな
かなか返事できませんが対面なら確実に返事できますし。どうぞ、よろしく。

  では、次回の語ろうかをお楽しみに。

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